海外送金でマイナンバーが要る理由と、100万円超で出る「国外送金等調書」
マイナンバーは送金のたびに出す「告知書」の記載事項です。100万円を超えると、送金した事業者が税務署に調書を出します。どちらも法律で決まった手続きで、仕組みを知っておけば落ち着いて準備できます。

日本から海外へお金を送るとき、銀行でも送金アプリでもマイナンバーを求められます。理由は「国外送金等調書法」が、送金する人に氏名・住所・マイナンバーを書いた「告知書」を出すよう定めているからです。この決まりは銀行だけでなく、Wise や SBIレミットのような資金移動業者にも同じようにかかります。
もう一つの決まりが、100万円を超える送金です。こちらは送金した事業者のほうが、送金ごとに「国外送金等調書」を税務署へ出します。送る本人が手続きをするものではありません。また、調書は税務署が取引を把握するための資料で、調書が出ただけで税額が決まるわけではありません。以下では、法令の条文と各社の公式ページ(2026年10月2〜3日に確認)をもとに、この二つの仕組みを順に説明します。
マイナンバーは、送金のたびに出す「告知書」の記載事項
国外送金等調書法(正式名は「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」)の第3条は、海外へ送金する人に、送金の際に告知書を出すよう定めています。告知書に書くのは、氏名・住所・個人番号(マイナンバー)と、送金の原因になった取引の内容です。受け取った事業者は、書かれた内容を住民票の写しなどの書類で確かめなければなりません。
この法律でいう「金融機関」には、銀行のほか、資金決済法で登録を受けた資金移動業者も入ります(同法施行令第2条)。送金アプリの多くは資金移動業者なので、銀行と同じようにマイナンバーを確認する立場にあります。
では、なぜ多くのアプリは登録時に一度だけマイナンバーを集めるのでしょうか。施行令第5条第2項には、事業者が本人の氏名・住所・マイナンバーを確認して帳簿に残していれば、送金のたびに番号を書き直さなくてよいという扱いがあります。登録時にまとめて確認するのは、この仕組みに沿った運用だと考えられます(各社がこの条文を理由に挙げているわけではありません)。帳簿の内容と違う氏名や住所で送ろうとすると、この扱いは使えません。引っ越しや改姓のあとに登録情報の更新を求められるのはそのためです。
銀行の場合は、本人名義の口座から振り替えて送る送金(法律上の「特定送金」)なら、送金ごとの告知書は要りません。ただしこの扱いは、口座を開いた銀行が本人の氏名・住所・マイナンバーを確認済みであることが前提です(マイナンバーを持たない人などは、氏名と住所で確認されます)。
- 送金する人 → 送金事業者:告知書を出す氏名・住所・マイナンバー・送金の原因を伝える(国外送金等調書法 第3条)。アプリでは登録時の本人確認でまとめて済ませることが多い。
- 送金事業者:書類で確認して記録するマイナンバーカードや住民票の写しなどで、告知書の内容を確かめる。帳簿に残しておけば、次からは番号の再提示が要らない(施行令 第5条第2項)。
- 100万円を超える送金だけ:送金事業者 → 税務署送金ごとに「国外送金等調書」を作り、送金した月の翌月末までに所轄の税務署へ出す(同法 第4条、施行令 第8条)。送る本人の手続きはない。
出せる書類は、法律の一覧と各社の受付範囲で少しずつ違う
告知書の確認に使える書類は、財務省令(施行規則第4条)で決まっています。日本に住所がある人なら、その日に有効なマイナンバーカードか、マイナンバーが載った6か月以内の住民票の写しに住所を確かめる書類を組み合わせたものです。住所を確かめる書類の一覧には、在留カードや特別永住者証明書も入っています。
ただし、実際に何を受け付けるかは各社がもう少し絞っています。たとえば住民票の写しは、法令が6か月以内とするのに対し、SBIレミットは3か月以内の原本を求めています。紙の「通知カード」は、記載が住民票と一致している場合に限って受け付ける会社があります。通知カードの記載事項の変更手続きは2020年5月25日で終わっているため、その後に引っ越した人のカードは使えないことが多いです。
| 事業者 | 案内している書類 | 注意書き |
|---|---|---|
| Wise | マイナンバーカード(両面)、マイナンバーが載った6か月以内の住民票、通知カード | 記載が古い通知カードや、「返納」「国外転出」の印があるカード・通知カードは受け付けない |
| Instarem | マイナンバーカード、または写真付き身分証(在留カードなど)と個人番号がわかる書類 | 個人番号を持っていることが利用条件の一つ |
| SBIレミット | 通知カードの両面コピー、個人番号カードの両面コピー、本人の番号だけが載った3か月以内の住民票の原本 | 個人番号通知書と、世帯全員の番号が載った住民票は受け付けない。書類を送らないと取引を制限する場合がある |
| DCOM | 本人確認書類と個人番号通知カード(個人番号カードがあれば通知カードは不要) | 送金依頼書が告知書を兼ねる |
| 楽天銀行 | マイナンバーの提供が必須 | 口座へのマイナンバーの登録が終わってから送金の審査に進む |
| 三菱UFJ銀行 | マイナンバーの届け出が必要(個人はアプリ「スマートマイナンバー」で届け出) | 窓口では「外国送金依頼書兼告知書」を使う |
| 三井住友銀行 | 個人番号カード、または個人番号通知カード | インターネットでの申し込みには書類のアップロードが必要 |
各社の受付書類は変わることがあります。申し込む前に、各社の公式ページで最新の一覧を確認してください。
100万円を超えると、送金した事業者が税務署に調書を出す
国外送金等調書法の第4条は、金融機関が顧客の海外送金を取り扱ったとき、一定の金額を超えるものについて「国外送金等調書」を税務署へ出すよう定めています。その金額は施行令第8条で100万円とされています。条文は「100万円以下のものを除く」という書き方なので、ちょうど100万円の送金は対象外で、100万円を超えた送金が対象になります。
調書は送金1件ごとに作られ、送金した月の翌月末までに、取り扱った営業所を管轄する税務署へ出されます。記載するのは、送金した人の氏名・住所・マイナンバー、送金額と送金日、告知書に書いた送金の原因、受取人の名前、受け取る国などです。外貨建ての送金は、財務大臣が定める為替相場で円に換算して100万円を超えるかどうかを判断します。
出すのは事業者で、送った本人には法律上の通知もありません。今回確認した送金各社の案内ページでも、100万円を超える送金が税務署へ報告されることを利用者向けに説明している箇所は見当たりませんでした。知らないうちに報告されていた、と驚く人が出るのはこのためです。
出典: 国税庁「国税庁レポート2025」。海外からの受け取りと法人の送金を含み、送金した人数ではありません。
数値を表で見る
| 事務年度 | 提出枚数(万枚) |
|---|---|
| 平成29 | 722 |
| 平成30 | 692 |
| 令和元 | 655 |
| 令和2 | 659 |
| 令和3 | 726 |
| 令和4 | 790 |
| 令和5 | 832 |
調書が出ることと、税金がかかることは別の話
国外送金等調書法の第1条は、法律の目的を「納税義務者の外国為替その他の対外取引…の国税当局による把握に資するため」と書いています。調書は、税務署が海外とのお金の動きを把握するための資料という位置づけです。
国税庁も「国税庁レポート2025」で、国外送金等調書などの資料を活用して海外取引の実態を調べていると説明し、調書をきっかけに海外のアフィリエイト収入の申告漏れを見つけた例を挙げています。この例で問題になったのは申告していなかった収入で、送金そのものではありません。
つまり、税金がかかるかどうかは、送ったお金のもとになった収入や、受け取った人の側の事情で決まります。調書が出たこと自体で新しく税金が生まれる、という説明は今回確認した国税庁のページには見当たりませんでした。家族への仕送りに税金がかかるかどうかは個別の事情によるので、気になる場合は税務署や税理士に確認してください。
10万円・100万円・3,000万円は、それぞれ別の決まり
海外送金には、混同しやすい金額の線がいくつかあります。目的も、手続きをする人も違います。
| 金額 | どの決まりか | 何が起きるか |
|---|---|---|
| 10万円を超える現金での送金 | 犯罪収益移転防止法施行令 第7条第1項第1号ケ | 窓口で現金を払って送るとき、取引時確認(本人確認など)の対象になる |
| 100万円を超える送金 | 国外送金等調書法 第4条・施行令 第8条 | 送金した事業者が、送金ごとに国外送金等調書を税務署へ出す |
| 3,000万円相当額を超える支払い | 外国為替の取引等の報告に関する省令 第1条 | 外為法の支払報告の対象になる(輸出入の代金以外。一部免除あり) |
継続して送金するための契約を結ぶこと自体も、金額にかかわらず取引時確認の対象です(同施行令 第7条第1項第1号コ)。送金アプリが金額に関係なく登録の時点で本人確認をするのも、この決まりと関係していると考えられます。
日本を離れるときは、アカウントや口座の扱いが先に変わる
帰国や海外への転居が決まったら、マイナンバーよりも先に、利用中のサービスが使えるかどうかを確かめておく必要があります。各社は次のように案内しています。
- Wise:日本から国外転出する人には日本のアカウントを提供できない。転居先が対応国なら、住所を更新して改めて本人確認をすれば使える可能性が高い。
- 楽天銀行:口座を開いた後に本国へ帰る場合や、住所が日本国外になる場合は、口座を解約する必要がある。
- 三菱UFJ銀行:海外の住所を届けている人や、海外へ出国する予定の人は、インターネットでの外国送金を申し込めない。
- Smiles:海外へ転居すると利用条件を満たさなくなるため、転居前に残高を精算・出金する必要がある。一時的な出国なら、出国日から最長90日の一時停止を申請できる。
帰国前の最後の仕送りをまとめて送るつもりなら、出国日より前に、利用中のサービスで送金できる期限を確認しておくと安心です。
送る前に確かめておきたいこと
- 登録している氏名・住所が、マイナンバーカードや在留カードと一致しているか(引っ越し・在留カード更新の後は特に)
- 手元のマイナンバー書類を、使う会社が受け付けているか(通知カード・住民票の発行時期など)
- 100万円を超える送金をする予定があるか。ある場合は、調書が税務署に出ることを前提に、送金の理由を説明できるようにしておく
- 近いうちに日本を離れる予定があるか。ある場合は、サービスを使える期限を先に確認する
書類の準備ができたら、実際に送る金額で各社の総コスト(手数料と為替レートの上乗せの合計)を比べてから送り先を選ぶと、受取額の差がわかります。送金コストの比較表では、送金先と金額を選んで各社を並べて確認できます。
あわせて読む
出典
本文の数字・条文・各社の扱いは、次の公式ページで確認したものです。確認日より後に変わっている場合があります。
- e-Gov 法令検索「国外送金等調書法」第1条(目的)確認日 2026-10-02
- e-Gov 法令検索「国外送金等調書法施行令」第2条(金融機関の範囲)確認日 2026-10-02
- e-Gov 法令検索「国外送金等調書法」第3条第1項(告知書)確認日 2026-10-02
- e-Gov 法令検索「国外送金等調書法」第3条第2項・施行令第7条(特定送金)確認日 2026-10-02
- e-Gov 法令検索「国外送金等調書法施行令」第5条第2項(帳簿)確認日 2026-10-02
- e-Gov 法令検索「国外送金等調書法施行規則」第4条(提示する書類)確認日 2026-10-02
- e-Gov 法令検索「国外送金等調書法」第4条第1項(国外送金等調書)確認日 2026-10-02
- e-Gov 法令検索「国外送金等調書法施行令」第8条(100万円)確認日 2026-10-02
- e-Gov 法令検索「国外送金等調書法」第9条(罰則)確認日 2026-10-02
- 国税庁「国税庁レポート2025」国際的な取引への対応確認日 2026-10-02
- 国税庁「国税庁レポート2025」(海外取引の調査)確認日 2026-10-02
- e-Gov 法令検索「犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令」第7条第1項第1号ケ確認日 2026-10-02
- e-Gov 法令検索「犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令」第7条第1項第1号コ確認日 2026-10-02
- e-Gov 法令検索「外国為替の取引等の報告に関する省令」第1条確認日 2026-10-03
- Wise ヘルプセンター「日本での本人確認」確認日 2026-10-02
- Instarem 日本向けページ(よくある質問)確認日 2026-10-03
- SBIレミット「ご利用の流れ(個人)」確認日 2026-10-02
- DCOM マネーエクスプレス「ご利用ガイド」確認日 2026-10-03
- 楽天銀行「海外送金サービス」確認日 2026-10-03
- 三菱UFJ銀行「外国送金の手続き」確認日 2026-10-03
- 三井住友銀行「外国送金」確認日 2026-10-03
- Wise ヘルプセンター「日本での本人確認」(国外転出)確認日 2026-10-02
- 楽天銀行 ヘルプ「外国籍の口座開設の手続き方法」確認日 2026-10-03
- 三菱UFJダイレクト「外国送金」確認日 2026-10-03
- Smiles「送金サービス利用規約」確認日 2026-10-03