海外の家族を扶養に入れるとき、送金の記録はどこまで要るか
海外に住む家族を扶養控除の対象にするには、親族だとわかる書類と、その年に本人あてに送金した記録が要ります。記録は家族一人ひとりについて、送った日の年で数えます。

日本で働きながら母国の家族に仕送りをしている人は、その家族を扶養控除の対象にできる場合があります。ただし日本の外に住む家族(国外居住親族)については、親族であることを示す書類と、その年に本人あてに生活費などを送った記録を、勤務先か税務署に出す必要があります。記録は家族ごとに必要で、現金の手渡しは記録になりません。
この記事では、国税庁のタックスアンサーと「国外居住親族に係る扶養控除等Q&A(源泉所得税関係)」(令和8年8月改訂)を中心に、どの家族が対象になるか、どんな記録が要るか、いつ出すかを順に整理します。税額がいくら変わるかは扱いません。ご自身のケースは、年末調整なら勤務先、確定申告なら税務署に確認してください。
対象になるかどうかは、家族の年齢で条件が変わる
国税庁によると、令和5年分(2023年分)以後の所得税では、日本の外に住む扶養親族が控除の対象になるのは次のどれかに当てはまる人に限られます。年齢は、その年の12月31日時点で判断します。
- 16歳以上30歳未満の人
- 70歳以上の人
- 30歳以上70歳未満で、留学のために日本に住所・居所がなくなった人、障害者である人、またはその年に納税者から生活費か教育費として38万円以上の支払を受けている人
30歳以上70歳未満で三つのどれにも当てはまらない家族については、国税庁は「扶養控除の適用はありません」と明記しています。働き盛りの年代の親やきょうだいに仕送りしている場合は、三つ目の「38万円以上の支払」に当たるかどうかが分かれ目になります。
なお、国税庁の用語集は、国外居住親族を「非居住者(国内に住所を有せず、かつ、現在まで引き続いて1年以上国内に居所を有しない個人)である親族」と説明しています。海外にいる家族がすべて当てはまるとは限らず、たとえば通常1年未満で終わる短期留学中の子は国外居住親族に当たらない、と国税庁は説明しています。国外居住親族に当たらない家族は、この記事で扱う書類のルールではなく、通常の扶養控除のルールで判断します。出国したばかりの家族など、どちらに当たるか迷う場合は、勤務先か税務署に確認してください。
- その家族は国外居住親族か国税庁の説明では、非居住者である親族。当たらない場合(日本の居住者として扱われる場合)は、この流れではなく通常の扶養控除のルールで判断する。
- その年の12月31日時点の年齢は16〜29歳、70歳以上なら次へ。30〜69歳なら、留学・障害者・その年に38万円以上の支払のどれかに当たる必要がある。
- 所得が上限以下か年間の合計所得金額が、その年分の上限以下であること(令和8年分は62万円以下)。
- 書類をそろえられるか親族関係書類と送金関係書類(30〜69歳の38万円ルートは38万円送金書類)を、家族ごとに用意する。
所得の上限は年分ごとに違う(令和8年分は62万円以下)
扶養親族になるには、年間の合計所得金額が一定額以下である必要があります。この上限は最近2年続けて変わりました。国税庁のタックスアンサー(No.1180)の質疑応答では、次のように年分ごとに分けて示しています。
出典: 国税庁 タックスアンサー No.1180 の質疑応答。令和8年分の62万円は令和8年12月1日に施行され、令和8年分から適用される金額です(国税庁)。
数値を表で見る
| 年分 | 合計所得金額の上限 |
|---|---|
| 令和元年分以前 | 38万円以下 |
| 令和2年分〜令和6年分 | 48万円以下 |
| 令和7年分(2025年) | 58万円以下 |
| 令和8年分(2026年) | 62万円以下 |
注意したいのは時期です。令和8年分の62万円は、令和8年12月1日に施行される改正によるもので、それまで法令の本文は58万円のままです。国税庁は、この改正で新たに扶養の対象になる家族がいる従業員は、その旨を書いた扶養控除等申告書を勤務先に出すことになると説明しています。数字を見るときは、どの年分の話かを必ず確かめてください。
要る書類は「親族関係書類」と「送金関係書類」の二つ
国税庁は、国外居住親族を扶養控除の対象にするときの書類を二つの種類に分けて呼んでいます。親族であることを示す「親族関係書類」と、生活費などを送ったことを示す「送金関係書類」です。年齢と条件によって、組み合わせが少しずつ変わります。
| 家族の区分 | 要る書類 |
|---|---|
| 16歳以上30歳未満、または70歳以上 | 親族関係書類 + 送金関係書類 |
| 30〜69歳で、留学により日本に住所・居所がなくなった人 | 親族関係書類 + 送金関係書類 + 留学ビザ等書類 |
| 30〜69歳で、障害者である人 | 親族関係書類 + 送金関係書類 |
| 30〜69歳で、その年に38万円以上の支払を受けている人 | 親族関係書類 + 38万円送金書類 |
30〜69歳でどれにも当てはまらない人は、扶養控除の対象外です。
親族関係書類は、戸籍の附票の写しなど日本の役所の書類と家族のパスポートの写しの組み合わせか、外国の政府や自治体が発行した書類(家族の氏名・生年月日・住所が載っているもの)です。書類が外国語で書かれている場合は、法令により翻訳文も出す必要がある、と国税庁は説明しています。
送金アプリの記録も対象になりうるが、4つの項目が載っていることが条件
送金関係書類は、金融機関の書類やその写しで、その年に家族の生活費や教育費を「必要の都度、各人に」送ったことがわかるものです。ここでいう金融機関について、国税庁のQ&Aは「資金移動業者も含まれます」と書いています。銀行だけでなく、資金移動業者の登録を受けた送金サービスの記録も、種類としては対象に入るということです。
ただし、どの記録でもよいわけではありません。国税庁は、インターネットで送金した場合の利用明細書や通帳の写しについて、次の項目が載っていて、生活費などを必要の都度送ったことが確認できるものであれば送金関係書類に当たる、と説明しています。
- 送金した人の氏名
- 受け取った人の氏名
- 送金した日
- 送金した金額
国税庁の資料は、特定の送金サービスの名前を挙げて「この明細なら使える」とは書いていません。使えるかどうかは、年末調整なら勤務先が、確定申告なら税務署が書類を見て判断します。送金サービスを選ぶときは、この4項目が載った記録をあとから取り出せるかを確かめておくと安心です(これは当サイトの提案で、国税庁の説明ではありません)。なお、送金関係書類は写しでも認められますが、親族関係書類はパスポートの写しを除いて原本が必要です。
送金は家族一人ひとりに。まとめて送ると一人分にしかならない
送金関係書類は、家族ごとに(法令の言葉では「各人別に」)必要です。国税庁は、配偶者と子がどちらも国外居住親族で、生活費を配偶者にまとめて送っている場合、その記録は配偶者の分にはなるが子の分にはならない、という例を挙げています。代表者に一括で送った場合も同じで、代表者以外の家族の記録にはなりません。
海外の共同名義の口座に送った場合も、家族それぞれに送ったことが明らかでなければ送金関係書類に当たりません。また、何年分かをまとめて送った場合は、送った年の分の記録にしかならない、と国税庁は説明しています。
38万円の判定は「送った日」の年で数え、手数料は記録に載っていれば含められる
30〜69歳の家族を「その年に38万円以上の支払を受けている人」として扶養に入れる場合は、その人あての1年間の支払の合計が38万円以上だとわかる「38万円送金書類」が要ります。数え方には次の決まりがあります。
- どの年の支払かは、家族の口座に入金された日ではなく、送った日で決まります。国税庁は、令和8年中に送って令和9年に入金された場合は令和8年の支払として判定する、という例を挙げています。
- 送金手数料は、38万円送金書類に手数料の額が載っている場合に限り、含めて判定してもよいとされています。
- 最初に扶養控除等申告書を出すときは、その年の見込み額で判定します。年末調整では実際に送った額を書くため、結果として38万円に届かなければ、年末調整ではその家族の扶養控除は受けられません。
外貨で送った分を円に直すときは、原則として、送金した金融機関の送金日の電信売買相場の仲値(TTM)を使います。円預金から外貨に替えてすぐ送る場合は、実際に引き落とされた円の額を使ってよいなどの例外もあります。ただ、国税庁の説明は銀行での送金を前提にしており、送金アプリへ別の銀行から円を振り込んで送るケースは直接扱っていません。自分の送金でどの額を使えばよいかは、勤務先か税務署に確認してください。
これ以外の場合、つまり16〜29歳や70歳以上の家族などについては、国税庁は「送金額の基準は特に定められていません」としています。ただし年間の送金額が少ないときは、生活費や教育費のための送金かを確認するよう勤務先に求めています。
年末調整では、その年最後の給与の前日までに送金の合計を書いて出す
会社員の場合、書類は2回に分けて出します。扶養控除等申告書を出すときに親族関係書類(留学の場合は留学ビザ等書類も)を、年末調整のときに送金関係書類(38万円ルートなら38万円送金書類)を出すか見せます。
法律上の期限は、その年最後に給与の支払を受ける日の前日です。この日までに、家族と生計を一にしている事実、つまりその年に送った金額の合計を扶養控除等申告書に書いて出します。実際の締め切りは勤務先が社内で決めるので、早めに確認してください。
年末調整のときに送金関係書類を出せなかった家族は、年末調整の計算から外されます。源泉徴収票ができる前に出せば計算し直してもらえる場合がありますが、その後になった場合は、自分で確定申告をするよう案内すると国税庁は勤務先向けに説明しています。確定申告では書類を申告書に添付するか、提出のときに見せます。年末調整で勤務先に出した書類は、もう一度添付する必要はありません。
同じ家族に1年で3回以上送った場合は、全部の記録の代わりに、送金ごとの日付・方法・金額をまとめた明細書と、その年の最初と最後の送金の記録を出す方法も認められています。この場合、出さなかった記録は自分で保管しておきます。38万円ルートでは、最初と最後の記録の合計が38万円に届かないとき、合計が38万円以上になるまで記録を追加で出す必要があります。
12月までに確かめておきたいこと
- 扶養に入れたい家族それぞれについて、その年の12月31日時点の年齢と、30〜69歳ならどの条件に当たるか
- 家族ごとに、本人の名前あてに送っているか(配偶者にまとめて送っていないか)
- 使っている送金サービスから、送金者名・受取人名・送金日・送金額が載った記録を取り出せるか。38万円の判定に手数料を含めたいなら、手数料の額も載っているか
- 外国語の書類の翻訳文を用意できるか
- 勤務先が決めている扶養控除等申告書の提出期限
国税庁は、従業員向けの案内「非居住者である親族について扶養控除等の適用を受ける方へ」を、日本語のほか英語・中国語・ポルトガル語・スペイン語・ベトナム語・フィリピノ語で公開しています(外国語版は2025年6月版で、令和8年度の改正より前の内容です)。家族に書類を頼むときに見せると話が早くなります。
送金の記録は、どのサービスで送っても同じように残るわけではありません。送金先と金額を決めたら、送金コストの比較表で各社の手数料と為替レートの上乗せを確かめたうえで、記録の取り出しやすさも含めて選ぶと、年末に慌てずに済みます。
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出典
本文の数字・条文・各社の扱いは、次の公式ページで確認したものです。確認日より後に変わっている場合があります。
- e-Gov 法令検索「所得税法」第2条第1項第34号の2/国税庁 タックスアンサー No.1180確認日 2026-10-02
- 国税庁 タックスアンサー 用語集「国外居住親族」確認日 2026-10-02
- 国税庁 タックスアンサー No.1180 質疑応答(所得の上限)確認日 2026-10-02
- 国税庁 タックスアンサー No.1180 質疑応答 Q4確認日 2026-10-02
- 国税庁「国外居住親族に係る扶養控除等Q&A(源泉所得税関係)」Q10確認日 2026-10-02
- 国税庁「国外居住親族に係る扶養控除等Q&A(源泉所得税関係)」Q10 注1確認日 2026-10-02
- 国税庁「国外居住親族に係る扶養控除等Q&A(源泉所得税関係)」Q12・Q37・Q38確認日 2026-10-02
- e-Gov 法令検索「所得税法施行令」第316条の2・第262条/国税庁 Q&A Q34〜Q36確認日 2026-10-02
- 国税庁「国外居住親族に係る扶養控除等Q&A(源泉所得税関係)」Q39確認日 2026-10-02
- 国税庁「国外居住親族に係る扶養控除等Q&A(源泉所得税関係)」Q33確認日 2026-10-02
- 国税庁「国外居住親族に係る扶養控除等Q&A(源泉所得税関係)」Q4・Q7・Q11確認日 2026-10-02
- 国税庁「国外居住親族に係る扶養控除等Q&A(源泉所得税関係)」Q7(円換算)確認日 2026-10-02
- e-Gov 法令検索「所得税法」第194条/国税庁「給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」確認日 2026-10-02
- 国税庁「国外居住親族に対する送金関係書類の明細書」確認日 2026-10-02
- 国税庁「国外居住親族に係る扶養控除等Q&A(源泉所得税関係)」Q14確認日 2026-10-02
- 国税庁「外国語版パンフレット(非居住者である親族について扶養控除等の適用を受ける方へ)」確認日 2026-10-02